PR

『リズと青い鳥』の見どころ6選と原作に隠れたエピソード

ドラマ系
記事内に広告が含まれています。
『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会 より

はい、今回は劇場版『リズと青い鳥』のお話しです。この作品は『響け!ユーフォニアム』のスピンオフ作品ですが、単なるスピンオフにしてあらずな作品なんです。

童話『リズと青い鳥』の物語と吹奏楽曲『リズと青い鳥』の世界観に『響け!ユーフォニアム』の登場人物である北宇治高校吹奏楽部員の3年生、鎧塚みぞれと傘木希美との物語がパラレルに展開されていく物語で、メッセージ性に富んでいて見る人によっては解釈の幅が広く、大変、文学性の高い不朽の名作なんです。

PR




『リズと青い鳥』の見どころ6選と原作小説との違いや隠れたエピソードを解説!

『引用』:©武田綾乃 宝島社「響け!」製作委員会 より

この劇場版『リズと青い鳥』は『聲の形』の山田尚子さんが監督を務めて製作され、第73回毎日映画コンクールで大藤信郎賞を受賞し、第22回文化庁メディア芸術祭ではアニメーション部門・審査委員会推薦作品にも選定された凄い作品なんです。

(特に大藤信郎賞は宮崎駿先生の作品が常連なのですごいですね。)

それでは、厳選した本作の見どころを6つと原作小説との場面の違いや隠れたエピソードなど諸々解説して行きます。

本作の魅力が伝わり見てみようかなと思って頂けるきっかけになれば幸いです。

人によって感じ方はそれぞれなのでそこんとこはよろしく御願いします。

PR

概要

監督 :山田尚子
脚本 :吉田玲子
原作 :武田綾乃
製作 :八田陽子、古川陽子、井上俊次、
鶴岡陽太
音楽 :牛尾憲輔
主題歌:Homecomings「Songbirds」
撮影 :高尾一也
編集 :重村健吾
制作会社:京都アニメーション
製作会社:『響け!』製作委員会

どんなお話し?

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
童話のリズと青い鳥 より

童話の『リズと青い鳥』〜

まず童話の方の『リズと青い鳥』のお話しは、ある日、両親を亡くしパン屋で働きながら一人で寂しく暮らしていたリズという少女がいつもの様に森のどうぶつ達にパンをめぐんでいたところに1羽の美しい青い小鳥がやってくる所から始まります。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
青い鳥 より

そしてある嵐のあった翌朝、リズの家の前で横たわる青い服に身を包んだ少女を助けてリズは家で介抱してあげます。

青い少女はすっかり元気になり、リズはその子と仲良く暮らす様になりますが、やがてリズはその青い女の子が青い鳥の化身である事に気付きます。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
リズ&青い少女 より

やがてリズは、この子は自由に空を飛んで何処へでも行けるのに、自分は寂しさのあまりその翼を奪ってしまってはいないかと自問自答し、葛藤を抱いていくのでした。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
鎧塚みぞれ & 傘木希美 より

『鎧塚みぞれと傘木希美の物語』〜

一方で本作の主人公、北宇治高校吹奏楽部3年生の鎧塚みぞれと傘木希美はと言うと、

前年度に若き名将、滝先生を迎えて全国吹奏楽コンクールで全国大会出場(銅賞)を果たし、古豪復活を遂げた北宇治高校吹奏楽部で毎日早朝から楽器の練習に励んでおりました。

そして北宇治高校吹奏楽部は今年度は自由曲を高難度の楽曲『リズと青い鳥』で全国大会金賞を目指していたのでした。

鎧塚みぞれと傘木希美は南中時代からの友達で内向的で友達もいなくいつもひとりぼっちだったみぞれに明るくて奔放な性格の希美が吹奏楽部へ誘ったのがきっかけで仲良くなった友達でした。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
みぞれに声をかける南中時代の傘木希美 より

そして、鎧塚みぞれはオーボエのエース奏者で傘木希美はフルートのエース奏者でした。希美は今回、自由曲に選ばれた『リズと青い鳥』が童話の物語からしてまるで自分達の様だとも語り、さらにこの曲の第三楽章「愛ゆえの決断」ではオーボエとフルートの掛け合いが最大の見せ場でもある為、本番で早く吹きたいと楽しみにしておりました。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
傘木希美&鎧塚みぞれ より

それに対してみぞれは表向きは希美に話を合わせつつも本心では「本番なんか一生こなくていい。」と呟いておりました。

そう、みぞれは希美の事が好きすぎて彼女の事が同性ながら特別な感情を抱く存在でした。なのでずっといつまでも一緒にいたいので本番なんか来なくていいとさえ思っていました。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
鎧塚みぞれと傘木希美 より

一方で希美は陽キャでいつも彼女を慕う後輩達や友達に囲まれており、一見太陽の様な明るさを持つ彼女でしたが、実は自己承認欲求や自己愛が強い女の子でなかなかその欲求が満たされないでおりました。

故に奏者としては、みぞれに対しては自身には一日の長はあると常に自負しておりました。しかし、ある日みぞれが外部コーチの新山聡美先生から音大のパンフレットを渡されて音大に進学するように勧められます。(スカウトですね。)

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
音大パンフレットを見る傘木希美 より

その事はすぐに希美も知るところとなり、心中が穏やかではなくなります。そして希美は唐突に「私もここの音大受けようかなぁ〜。」と言い出すのでした。

やがてコンクールも迫り練習もさらに熱が入る中、最大の見せ場であるはずのフルートとオーボエのソロの掛け合いのところがどうもしっくりこない状況が露呈してしまいます。

一見仲良しの二人がやるんだから、息もぴったりなはずなのですが、実際はしっくりいかず、少しずつ行き詰まりを見せだしてしまい、ついには2年生の後輩、高坂麗奈にまで「私は先輩の本気の演奏が聴きたいんです。」とまでみぞれが言われる始末になりました。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会 より

物語の冒頭で「disjoint」と映し出された二人の物語は無事に「joint」に変わっていけるのでしょうか…。って感じでこの物語は静かに進んでいくのであります。

PR

¥6,427 (2025/10/05 21:24時点 | Amazon調べ)

主な登場人物

童話の中の『リズと青い鳥』〜

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
リズ より

1.リズ(CV:本田望結)〜

童話の中に登場する少女。両親を亡くして街のパン屋で働きながら一人で暮らしている。ある日、いつもの様に森の動物達と戯れてる時に美しい青い鳥を見つけ、後にその青い鳥の化身の青い少女と一緒に暮らし始めるが、やがてその少女の事を自分は縛ってしまってはいないかと自問自答する様になっていく。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
青い少女 より

2.青い少女(CV:本田望結)〜

ある嵐の日の翌朝にリズの家の前で倒れていた青い髪の少女。倒れていたところをリズに介抱されて元気になり、リズと仲良くなり一緒に暮らし始めるが実は青い鳥の化身である。

北宇治吹奏楽部面々〜

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
鎧塚みぞれ より

1.鎧塚みぞれ (CV:種崎敦美)〜

3年生でオーボエ担当。南中時代にいつもひとりぼっちでいたところを傘木希美に声をかけられて吹奏楽部に入る。希美の事を心酔しているが以前、突然いなくなられた事があり、その時のトラウマは今も心の何処かに抱えている。

中学から始めたオーボエの腕前は超高校級。音楽は大好きな希美がくれたものとして、まるで息を吸うように練習をし、その膨大な量の基礎練習の積み重ねが天才の域に達する演奏技術を生み出している。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
傘木希美 より

2.傘木希美 (CV:東山奈央)〜

3年生のフルート担当。1年生の時に当時の3年生と衝突して一度部を去っているが、2年生の夏以降から復帰して今は堂々のフルートソリストの座に君臨するエース奏者。

太陽の様に明るい性格の黒髪ポニーテールの可愛らしい女の子で、いつも沢山の友達や後輩達にも慕われている。

南中時代では部長としても奏者としても輝いていたが、高校では途中退部して社会人楽団に入っていたりと遠回りしたり、なかなか思うように輝けていなかった面もあり、そのせいか承認欲求が強いという面ももっている。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
吉川優子 より

3.吉川優子 (CV:山岡ゆり)〜

3年生 トランペットパートリーダーにして北宇治高校吹奏楽部 部長 兼ドラムメジャー。

大きいリボンがトレードマークの可愛らしい女の子。気が強く同学年の中川夏紀とはよく喧嘩もするが芯の所では信頼し合っている。

また、みぞれの事をいつも気にかけており、みぞれが希美に依存しがちな面を心配しつつ、いつも彼女を応援している情に厚い女の子。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
中川夏紀 より

4.中川夏紀 (CV:藤村鼓乃美)〜

3年生のユーフォニアム担当で北宇治吹奏楽部副部長を務める。1年生時に傘木希美に誘われて吹奏楽部に入った経緯を持っていて、一時、部を離れていた希美が復帰する時に尽力しています。

吉川優子とはよく小競り合いの様な喧嘩をしているが、芯の所では大切に思っていて頑張りすぎる彼女の事を副部長として支えている。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
黄前久美子 より

5.黄前久美子 (CV:黒沢ともよ)〜

2年生のユーフォニアム担当で先代の3年生田中あすかが卒業した後のユーフォニアムエース。『響け!ユーフォニアム』での主人公でもあります。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
高坂麗奈 より

6.高坂麗奈 (CV:安済知佳)〜

2年生のトランペットエース。超高校級の腕前を持っており、今回はみぞれの演奏の異変も見抜き先輩に対しても躊躇なく指摘する。黄前久美子とは特別な関係の親友。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
剣崎梨々花 より

7.剣崎梨々花 (CV:杉浦しおり)〜

1年生のオーボエ担当。2つ上の先輩である鎧塚みぞれの事が大好きで、もっと仲良くなりたいと思い、いつも同じパートの子達とダブルリードの会(お茶会)に誘っているが、内向的なみぞれからは断られ続けていて悩んでいる。

オーボエの腕前はみぞれには遥かに及ばないが、みぞれに少しでも近づきたくて一生懸命練習し、リードの作り方をみぞれから直接習ったりする事に成功し、みぞれが久美子以外で心を許した数少ない後輩。いや、愛弟子になりつつあります。

PR




『リズと青い鳥』の見どころ6選!

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会 より

1.味のある独特な画風〜

この劇場版『リズと青い鳥』は『響け!ユーフォニアム』シリーズの同一世界の物語ながら、本作だけ画風が違います。

ですが、今回スポットを当てている鎧塚みぞれと傘木希美の物語を描くにあたって画風を変える事により、より独立した作品として観れて実に味わいのある雰囲気をかもし出しておりますね。

各キャラも元々の『響け!』のデザインを踏襲しつつ、『リズ青』仕様にいい感じの味わい深いデザインになっていますね。山田尚子監督のインタビューでも武田綾乃先生の原作プロットを読まれた時に、原作の持つ、透明な作り物ではない空気感を映像にしてみたいと語られてました。

また、今回は集団ではなく個を描くお話しなので小さな変化を積み重ねることを大事にしたいとも語っておられました。

2.物語性の高いシンクロする音楽

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
吹奏楽「リズと青い鳥」の演奏シーン より

吹奏楽『リズと青い鳥』は4つの楽章にて構成されております。

第一楽章「ありふれた日々」
第二楽章「新しい家族」
第三楽章「愛ゆえの決断」
第四楽章「遠き空へ」

この楽曲には「ライトモチーフ」と言う特定の人物や状況を表現する為に用いる短いメロディーの手法が使われております。(ワーグナーのオペラとかでよく使われる手法ですね。)

頭の所でピッコロが「ソーラファソー♪」と始まるのが青い鳥のライトモチーフでその後トランペット、ユーフォニアムなどで奏でられていきます。

第一楽章「ありふれた日々」では孤独に暮らしていたリズが青い鳥を見つけるとこまでを表し、第二楽章「新しい家族」ではウィンドマシンを使った嵐の表現がなされ、その嵐の過ぎ去った翌朝、青い鳥の化身の少女と出会いリズと一緒に暮らしだすところが表現されてます。

そして第三楽章「愛ゆえの決断」ではオーボエとフルートの掛け合いとなり、リズのライトモチーフがオーボエで青い鳥のライトモチーフがフルートで奏でられます。

やがてオーボエとフルートが交錯して青い鳥を自由にするべきではないかと自問自答するリズの心と飛び立つ青い鳥が表現されてます。(オーボエとフルートのライトモチーフが逆転されてます。)

さらに第四楽章「遠き空へ」では変化を恐れて何処へも行けなかったリズが孤独に打ち勝ち、新たな生活を求めて大海原へ船出する情景が表されているのです。(第四楽章の始まりに鐘の音が鳴り出港の合図を表現してますね。)

この楽曲を通して童話『リズと青い鳥』と鎧塚みぞれと傘木希美の物語が見事にシンクロして進んで行くのもこの作品の見どころです。

3.散りばめられたメッセージの数々〜

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
デカルコマニーの青い鳥 より

◎青い鳥の羽ばたく押し絵〜

この作品中に登場してくる青い鳥の羽ばたく絵がデカルコマニーと言う技法で表現されております。これは紙を2つに折りたたんで作られており、左右対称を表します。

この左右対称の技法はリズと青い少女を思わせますね。これは解釈によっては内向的なリズと奔放な青い少女は実は二人で一人(青い少女はリズの孤独感が生み出したイマジナリーフレンド)の対の存在である事も思わせました。

楽曲的にも第三楽章で青い鳥のライトモチーフ(フルート)が最後の方はフルートからリズのライトモチーフであったオーボエに変わって演奏されていました。それはリズと青い少女のCVを共に本田望結さんが担当されていた点でももしかしたらとそう思わせました。

◎足音や仕草〜

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
鎧塚みぞれ&傘木希美 より

鎧塚みぞれと傘木希美の2人の歩く距離感が何か違いました。物語の始めの頃、希美は後ろのみぞれの様子をあまり知ったこっちゃない進み方で、みぞれはまるで親ガモを追いかけて歩く子ガモの様な感じでした。

それが物語の最後の方では揃ってくるんですね。そこも2人の間の気持ちや距離感がいい感じで表現されていたと思います。

また、足音だけでなく視線の動きや靴先の動きなど口ほどに物を言う細かい仕草で繊細に様々なメッセージを出しているのでそれらを拾ってみるのもいい作品です。

◎剣崎梨々花のゆで卵

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
剣崎梨々花&傘木希美 ゆで卵のシーン より

鎧塚みぞれのオーボエパートの後輩の剣崎梨々花がみぞれと仲良くなりたくて悩んでいてみぞれと仲良いと思われる先輩の傘木希美に相談するシーンがありました。

この時、彼女は相談に乗ってくれた御礼にとゆで卵を傘木希美にあげました。この時、飴やグミやチョコではなく、なぜかしらゆで卵でした。これも深読みするとこれから鎧塚みぞれは羽化しますよと思わせるメッセージとも感じとれました。
(現時点ではまだ卵であると言う事。)

◎飛び立つ2羽のカモメ

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
飛び立つ2羽のカモメ より

みぞれと希美が大好きのハグをして、いろんな思いをぶつけ合った後、場面が変わり青空に2羽のカモメが飛び立っておりました。

これは吹奏楽『リズと青い鳥』の第四楽章「遠き空へ」を思わせますね。第四楽章では冒頭で鐘の音が2回鳴るのです。それは船の出港を意味するのですが、港や船の代わりに海を思わせる2羽のカモメがみぞれと希美、リズと青い鳥を表したメッセージかと思いました。

4.鎧塚みぞれと傘木希美の執着の解放成長

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
傘木希美&鎧塚みぞれ より

この二人は南中時代からの友人で仲良しなのですが、やや不均衡な関係の二人とも言えます。

みぞれは希美に対し、同性ながら執着を持ち、希美さえ一緒にいたら極論他はどうでもいい。とさえ思っていて、楽器の方は希美に喜んで貰いたくて息をするように基礎練習を積み重ねてきました。

希美はみぞれの事は好きだが大勢いる友人の中の1人。そして楽器の方はフルートを極めたいのではなく、フルート奏者として周囲や大人から認められたい。と言う承認欲求が強く、自己愛の強い子です。

この時、奏者としては、みぞれはもう既に天才の域で高校生の中にプロが1人混じっているレベルでした。

希美も高校生ではかなり優秀な奏者でしたが、みぞれは希美の実力不足を冒頭から気づいていて「希美は練習が好き?」と言っており、言い換えると「練習足りてないんじゃないの?」ともとれる事を言ってました。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
鎧塚みぞれを指導する新山聡美先生 より

そして、希美はみぞれが新山聡美先生から誘われた音大進学の話しをめぐり、やがて彼女の心には嫉妬心などが顔を出し始めます。みぞれを意識するあまりか、みぞれに対してつい冷たいそぶりを見せてしまってましたね。

みぞれの方は演奏がリズと自分を重ねていたが故に(青い鳥を手放したくない気持ち=希美を手放したくない気持ち)、結果として希美の演奏レベルに合わせて窮屈な感じの演奏になっておりました。

新山聡美先生からはリズではなく、青い鳥の立場で考えてみたら?と助言され、みぞれの気持ちが次第に変わっていきます。別れるのは寂しいけどリズに幸せになってほしいという気持ちは本当の気持ちと思う様になります。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
鎧塚みぞれ&新山聡美先生 傘木希美 より

そして第三楽章の演奏練習でみぞれが渾身のソロをリミッター解除でブチかまし、ついに覚醒します。フルートのエース傘木希美を完全に役不足にしてしまい、希美の承認欲求や嫉妬心などの気持ちも全てを打ち砕きました。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
覚醒する鎧塚みぞれと打ち拉がれる傘木希美 より

希美はあまりの技量の差に情けなくなり、悔し涙で視界が歪み、フルートを握りしめ演奏もままならなくなりました。演奏後、ショックで理科実験室に逃走して1人呆然として打ちひしがれておりました。

私は思わず、格下だと思っていたケンシロウの北斗百裂拳を食らい、完膚なきまでに打ちのめされた南斗孤鷲拳、殉星のシンのやられっぷりを彷彿してしまいました。
「北斗の拳」より〜

みぞれも希美の事が心配になり、希美の元へ駆けつけました。二人はようやくお互いの思いを吐き出して語り合いました。

希美との過去の事、音楽に対しての思い、希美への感情を語りました。希美はみぞれへの嫉妬があった事や自分の醜い部分を全てさらけ出し吐露しました。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
傘木希美&鎧塚みぞれ 大好きのハグシーン より

そしてみぞれは大好きのハグを希美にぶち込みました。(南中で流行った遊びでハグして相手の好きなとこを伝え合う遊び)希美へのありったけの想いを沢山伝えました。
(だいしゅきほーるど!)

希美はみぞれが努力家で彼女のオーボエが大好きだとだけ伝えました。それ以上の事はみぞれの音大への決心が揺らがない様にあえて留めている様にも見えました。

二人はここでようやく、お互いの事を理解し、執着を解き放ち、変化を受け入れて新しく歩みだして行く事となりました。

そしてこの後、希美がみぞれのソロを完璧に支えてみせるから今は待っていてほしいと語っていたのはフルートソリストとしてのせめてもの意地だったのでしょう。

その後の劇場版『誓いのフィナーレ』では格段に腕をあげた演奏を本番でキメてました。
(ライジング希美)

また、希美がみぞれに帰り道にスィーツ食べて帰る提案をして「本番がんばろう!」のセリフが被った時に「ハッピーアイスクリーム!」とみぞれが叫ぶんですが、以前のみぞれなら絶対に言わなかったセリフですね。

(※ハッピーアイスクリームとはセリフが二人同時に被った時にすかさずハッピーアイスクリームと先に言った方がアイスを奢ってもらえる言葉ゲームです。)

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
傘木希美&鎧塚みぞれ 帰り道 より

ただ、希美は「ハッピーアイスクリーム」の意味が解らなかったのですが、みぞれはそんな事はどうでもよく、今は大好きな希美と一緒に歩いているだけで充分幸せでニコニコと笑顔で歩いているのが印象的でした。

5.演奏シーンが秀逸〜

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
演奏シーン より

今回の作品も演奏シーンは本当に秀逸でした。コンクールでの演奏シーンは無かったのですが、みぞれがリミッター解除して第三楽章を演奏するシーンとなりますが、指の動きや息づかいやピストンの動きなど精密描写が炸裂してました。

6.等身大の人間ドラマ〜

今回は割と部活動内での先輩、後輩の関係性や女子高生の日常会話などが割と「響け!」シリーズ以上に等身大に描かれていると感じました。

朝ごはんの話や、遊びの話、男の子とのデートの話しやデートに着ていく服の話しなど、きっとこんな感じの世界なんだろうなと感じとれます。

そんな中で剣崎梨々花がいい味を出してましたね。あの、とっつきにくい鎧塚みぞれに果敢に絡んでいき最後は愛弟子になってしまうくらい入り込んだのは偉いです。

『引用』:©武田綾乃 宝島社 「響け!」製作委員会
剣崎梨々花 より

また、彼女の存在があったからこそ、その後の鎧塚みぞれに化学反応を起こして行ったのだとも思えました。みぞれからプールに誘うとか一緒に練習したり、リードを作ってあげたりと希美以外で誰かの為にと言う気持ちが芽生えだしたのはひとえに彼女の功績でしたね。

原作小説との違いと隠れたエピソード

劇場版『リズと青い鳥』と原作小説の『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部 波乱の第二楽章』とでは同じ場面でも違う状況がいくつかあります。

みぞれがリミッター解除して第三楽章「愛ゆえの決断」をブチかまして希美を打ち砕いたシーンでは原作では、まず場所が学校ではなくて夏休み合宿の最終日に行われました。

打ちひしがれた希美を心配した中川夏紀が自分ではどうしても希美を甘やかしてしまうとして黄前久美子を派遣しました。

久美子は希美が本音を話すことのできる後輩だからです。久美子は希美から自分のみぞれに負けたくなかったと言う嫉妬心からきた言動や引っ込みつかなくなった事など自身の醜い部分を全て吐露してそんな気持ちでみぞれに接していた事などを聞きました。

そして久美子はそんな希美に「私、やっぱり希美先輩のやったこと、ひどいなって思います。どんな理由があってもみぞれ先輩に嘘をついたことに変わりないし」、「でも、それでも希美先輩のこと、嫌いにはなれないです。」と語りました。

希美先輩も「ごめんな、損な役回りさせて」と語りました。
「北宇治高校吹奏楽部 波乱の第二楽章〜彼女のソノリテ」より

このシーンは劇場版も原作小説も両方好きですね。

また、アニメでも原作でも一見、傘木希美は悪女と言う程ではないですが、人間誰しも大なり小なり持っているであろう醜い部分の気持ちとかを素直に出していました。

ただ、彼女は最終的にはそれらと向き合い、良い方向に処理して行けたのが良かったと思います。ドス黒い感情に染まりきるまでは闇落ちしなかったですね。個人的には彼女のそんな人間くさい素直さのある所とか好きだと思いました。

もし、彼女が1年生の時にあすか先輩の言う事を聞いて退部せずにいれたなら、翌年は実力的にフルートソリストの座を勝ち取り、夏合宿の時には新山聡美先生の指導を受けれて格段に力を伸ばすことが出来たはず。音大にも勧められる可能性もあったかも知れません。

そして音大受験に必須なピアノ教室もコツコツ1年近くかけてレッスン受けていけば副科受験レベルにはなれたはず。バックボーンのある彼女なら上達も早いはずだし。

こう言った背景もあり原作スピンオフ小説の「飛び立つ君の背を見上げる」では〜傘木希美はツキがない〜と語られるのかな。

PR

エンディング曲もいいね。

Homecomingさんの主題歌「Songbirds」もいい感じの楽曲です。

まとめ

◉劇場版『リズと青い鳥』は『聲の形』を手掛けた山田尚子監督の作品で「大藤信郎賞」を受賞した大変解釈の幅が広く文学性の高い不朽の名作です。

◉劇場版『リズと青い鳥』は童話の「リズと青い鳥」と吹奏楽「リズと青い鳥」の物語や世界観がシンクロして進んでいく作品。

◉本作は「響け!」シリーズの中でも独特なキャラデザインの画風や、デカルコマニーの様な手法も取り入れた味のある作品です。

◉吹奏楽の演奏シーンや物語性のある楽曲も含めて大変秀逸な作品です。

◉HomecomingさんのED主題歌「Songbirds」もいい感じの楽曲です。

◉等身大の人間ドラマが大変魅力的な作品。

◉二人の主人公、鎧塚みぞれと傘木希美が「リズと青い鳥」の物語を通じて、彼女達の抱える理想への執着を手放して乗り越えて行く事が核となる物語。

PR

PR



ドラマ系
ブロックしたスパム
シェアする
さとのぶまるをフォローする
タイトルとURLをコピーしました